【落としもの①】
昨年末、埼玉の大宮駅構内の催事場でバイトした時のことです。
催事なので私物を置くスペースもなく、荷物を最小限にしていきました。長財布もかさばるので家に置き、青い二つ折りの定期入れに万札を一枚だけ挟み、それをズボンの右後ろポケットに入れて出勤しました。
仕事の内容は帰省する人向けのお土産を売るというシンプルなものでした。それがそんなに忙しくなく、その分店長の当たりがキツかったり、空気も悪く冷えるので1日過ごすのは結構大変かもといった感じでした。
昼休み、コンビニでカロリーメイトとコーヒーを買い暖をとります。
10時間ほど働き、寒さに体力取られたかなぁとダルい身体で帰路に着きます。
新宿まで戻ってきて、何となく手持ちのお金を確認しようとポケットに手をやるとお金がない。昼のコンビニのお釣り、札の9000円がないんです。どこ探してもない。
【落としもの②】
そんなハズないと。ギターのピックでもそんなに失くしたことないのに、現金なんて落とすハズがないと。ワイシャツの胸ポケット、制服のポケット、上着のポケット、全部探しましたがやっぱりない。えええ9000円落とした?もしかして。財布はジャマだろうと家に置いてきた自分が悪いとはいえ、大宮まで行って何してんねんやろ。と情けなくなりました。
大宮駅は新幹線も通る大きな駅です。JR奈良駅で落とすのとは訳が違う。それでもちょっと9000円はすぐに諦めたくない。そもそも一体どこで落としたのか。ん?そういえばコンビニでお釣りちゃんともらったかな。記憶がない。店員さん、万札と千円札見間違えたかも。レシートがない。分からない。一か八か電話してみよかな。電話してみました。
そのコンビニの店員さん、非常に親切で、レジの記録を見てみますのことで調べてくれました。
【落としもの③】
「ありました。カロリーメイトと缶コーヒーをお買い上げいただいております。」
「失礼ですが、預かり金はいくらになってますか?」
「1万円、となっております。」
「大変失礼ですが、お釣りが手元にないもので、店員さんの渡し忘れというのは有り得ないでしょうか?」
「ビデオカメラの記録があるので確認致します。」
「有難うございます。お忙しいところ申し訳ありません。」
「9000円も確かにお渡ししており、お客様は青い財布のようなものにしまわれております。」
「確認していただき、有難うございます。変なことをお聞きして大変失礼致しました。」
「いえいえ、またのご来店をお待ちしております。」
【落としもの④】
思わず店員さんの神対応に感動しましたが、どうやら9000円は自分の手で落としたようです。バックヤードでなのか、改札でなのか、全く見当がつきません。
いいや、もう諦めよう。今日一日ボランティアしたと思えばいい。その日は寝ました。
翌日も同じバイトだったため、大宮へ。まだどこで落としたのか気になっています。昼休みに、ダメ元でバックヤードにある事務所を訪ねました。「落とし物はこちらに届きますか?」「何落とされたんですか?」「9000円なんですけど、五千円札1枚と千円札4枚です。」「今のところ届いてないですねぇ。」「そうですよね、失礼しました。」
やる事はやったし、気持ちを切り替えて売り場に戻りお土産を売ります。
15時ごろ店長から呼び出されました。「辻村さん、お電話です。」なんだろう。もしかして。
【落としもの⑤】
「私、事務所の者ですが、辻村さん、9000円見つかりました!」
「本当ですか!わざわざご連絡いただきありがとうございます!」
「鉄道警察の落とし物係に届いていたようです。」
「なんと申し上げて良いのやら、本当にありがとうございます!」
「いえいえ、見つかってよかったですね。それでは。」
またもや神対応。その方はわざわざ鉄道警察まで連絡を入れて下さったのです。そして9000円はそっくりそのまま手元に帰ってきました。こんなことあるんやなぁと。皆さんなんて優しいんだろうと。拾って届けてくださった方に御礼できないのが悔やまれます。
そして色んな方に迷惑をかけて申し訳ありませんでした。ありがとうございました。
という、そんな話でした。以後気をつけます。
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